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2012年4月24日 (火)

夢見つつ深く植えよ

タイトルに惹かれて読みたいと思う本がある。米国の詩人メイ・サートンのエッセー「夢見つつ深く植えよ」もそのひとつ。

そそられるのは題名だけではない。都会から荒々しい自然の片田舎に46歳で単身移住。しかも、住むのは広大な土地をもつ築百年の古屋敷とくれば、元「田舎暮らし派」の一人としてページをひもときたくなる。

同性愛であることを自作で告白したために大学を追われるなど、社会的なマイノリティーであることも個人的なサートンへの関心を高めている。マイノリティーゆえの孤独。自然との交流を通じて彼女はどのように孤独と向き合っていったのか。

移住先のニューハンプシャー州のネルソンでの生活は、古屋敷と庭作りを中心に展開される。写真を見ると立派な家だ。家具やインテリアも重厚。土地は3万6千坪以上! 昔、「田舎暮らしの本」で眺めた日本の古民家とはスケールが違う。

しかし、写真に見るサートンの家は、彼女が荒廃した老家屋を手間暇かけて自分の棲家へと作りかえていった結果なのだ。さまざまな地元の人々も彼女のネルソン暮らしに手を差し伸べる。そして、ついに真のマイホームを手に入れたサートンは、自宅の庭作りに取りかかる。

「花生ける夏」には、庭作りにかけるサートンの情熱があふれている。花を育てる喜びを縦横に語ったこの章は、この本の魅力のひとつだろう。

個人的にもっとも印象に残ったのは、本のタイトルと同名の最終章だ。ここでは、老いを肯定的に捉えるサートンの心情が綴られている。たとえば、次のような文章がある。

「55歳をすぎると死の予覚のために、われわれのもっとも内奥の生活の質が変わる。突如として時間は圧縮される。生きること自体がかつてなかったほど貴重になる・・・(中略)・・・浪費をつつしみ、自分にとって重要なことと重要でないことを鋭敏に自覚しなくてはならなくなる」(「夢見つつ深く植えよ」武田尚子訳/みすず書房)

55歳はまだ過ぎていないけれど、今の自分の心境に通じるものを感じた。人生の残り時間が短くなっていくなかで、限りあるエネルギーを集中的に注ぐ対象をどのように見極めていくか。

何を深く植えるのか、その実像はまだクッキリとは見えていない。というか、このまま夢見ているだけで終わってしまいそうな気もする。

ちなみにサートンは「夢見つつ」が有名だけど、数年後に書かれた「独り居の日記」をイチオシに挙げる人も多い。「夢見つつ」とは対照的に華のないタイトル。でも、面白そうなのでamazonで購入することにした。

含蓄に富むサートンの文章は、スルメのように噛めば噛むほど味がでてくる。「夢見つつ」ともども息の長い愛読書になりそうだ。

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コメント

キレイに撮れてますね。

投稿: むむ | 2012年6月 1日 (金) 09時40分

ありがとうございます。遊歩道の水溜まりのおかげです^^

投稿: tokajar | 2012年6月 1日 (金) 17時36分

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